心霊体験「見えない誰か」 [昭和の写真]
不安顔の介護士さん、
「お母様の認知症が進んだらしく、夜中によく独り事を...」
「まるで誰かが横にいるみたい」と、
私に聞いてきた。
介護士さんが何を聞きたいかは解った。
食事をしている時でも、
スプ-ンを持つ母の手が器の上で止まり、
「見えない誰か」に止めなさい!止めなさい!
と強い口調で言ったかと思ったら、
しまいにスプ-ンを投げてしまった事も有った。
まるで「見えない誰か」が母の腕を掴んでいる様に見えた、
介護士さんには、「それは、母がもう一人の人格を自分の中に創って話しているだけですよ」と答えた。
こんな事もあった、
3時のおやつの時間、
「見えない誰か」を払い除ける様に右手を左右に大きく振る母、
物凄い形相で「見えない誰か」を追い払おうとしている。
後ろのテ-ブルに着いているお婆さん達、喉を潰した様な声で
「お化け~」「お化け~」と叫んだ。
横に座る母の目を見たら、小さい声で「お化け」と教えてくれた。
私には、それが「お化け」でなく、母を迎えに来た「死神」に思えた。
私は、見えない「死神」にもう少し母と居させてくれと頼んだ。
「もう少しとは、いつまでだ!」と聞く「死神」に、後3ヶ月と答えてしまった。
母は、3ヶ月後の夏の暑い日に逝ってしまった。
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